SICS

SICSについて

主宰あいさつ

主宰あいさつ


Photographer : Masahide Sato

色を見分ける能力は、日本人なら誰でも子供の頃から自然に身についています。例えばみずみずしいリンゴの赤、美味しそうな牛肉の赤などを見分けるには、特別な教育もトレーニングもそれほど必要ありません。ところが、いざ目的に相応しい色の組み合わせを考えると途端に選択が難しくなってしまいます。いろいろ悩んだあげく、最後は自分が気に入った色でそれなりの結論としてしまいがちです。しかも、自分の好き嫌いで勝手な組み合わせであるにもかかわらず、かなり「いい線」いっていると自分なりに思い込む傾向があります。

色は組み合わせ次第でイメージが変化します。その微妙なトーンや面積比などでいろいろなイメージに変わってしまう。しかも使える色数が増えれば、当然その組み合わせは「無限大」に近くなってしまいます。当初、本人が意図した配色が、相手次第で解釈やイメージの受け取られ方に大きい違いが生じてしまう。その結果、意図や目的の理解は相手の経験や直感力に頼ることになってしまい、なんとなくこんな「感じ」で終わってしまう。ましてやデザイン全体となると、その構成要素は複雑で一言では言い難く、しかも言葉だけで相手に正確に伝わるとは思えない。参考になりそうなビジュアルを探すにも、相応しいものはそう簡単に見つからない。

そこで、誰もが共通で誤差の少ない連想イメージが抽出できたら、さぞかし「情報」のやり取りは、その客観的なイメージ言語を使うことで便利になると思い、研究を続けようやく使いやすい「システム」になりました。色から言葉へ、言葉から色へのベーシックな心理調査を繰り返すことから、基本となるデータベースを活用したコーディネートの考え方を整理、さらにアプリケーションソフトにつなげています。この研究の結果から生み出されたソフトの数々は、多くの人に有効に活用してもらうことで、さらに具体的な成果につながると思います。

この研究会は、これらの手法を実践・習得することを目的としていますが、単なる知識や情報として吸収するだけでなく、自分の感性を磨き、発想やものの見方を少しでも変えたいと願う人たちの自主的な参加でスタートしました。現在もその基本姿勢は変わらず、互いの切磋琢磨と他人の感性と自分を冷静に比較することでさらなる研鑽を積み重ねています。単に多くの人にこの考え方を理解してもらうのではなく、一人一人の感性を豊かに、より文化的な暮らしの具体化に向けて努力したいと考える人を地道にサポートする研究会でありたいと思います。 


静岡文化芸術大学名誉教授 宮内博実
→株式会社デザインインテグレート ホームページ(http://design-integrate.jp/